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【13冊目】思考の整理学/創造力というエンジン

更新が滞って約一年。原因は不明だが、もう一度書評をしてみようという気持ちになった。

そんなわけで、本日より更新を再開。

とはいえ、あまり力まないようにしたい。昨年の反省すべき点はここである。どうも一つ一つに掛ける労力が大きすぎたようだ。少し忙しくなると更新できないようでは、長期の継続は難しい。今回はあっさりした内容で長く続けたい。

口火を切ってくれるのは、外山滋比古の「思考の整理学」。出会いのきっかけは中学受験の問題集。ほんの一部分のみが掲載されていたのだが、全貌が気になるには十分であった。早速、後日購入。

本の内容に話を移そう。

目次には、統一感の無いタイトルが並んでいる。短いエッセイを集めた本なのか。そう思って読んでみると、そうでない。脈絡のないタイトルの集合だが、本書を読み進めるとジワジワと繋がってくる。次のタイトルはどう繋がるのか、期待しながら読むのは楽しい。

出版された時代がコンピュータが普及し始めた頃のため、ハウツー的な話になるとレトロな空気は漂い始める。澤田昭夫の「論文の書き方」や加藤周一「読書術」にも感じた空気だ。どのハウツーも現代にはミスマッチな方法だが、どういう訳か、憧れてしまう。読んでいて、特殊な心地よさを感じる。

一方、本書のメインテーマとなる思考の整理に関する考察は、現代においても色褪せていない。学生の受けるテストは、ほとんどが記憶力を競うものである。しかし、コンピュータが現れた。これには人間は勝てない。したがって、今後は創造力こそが人間の力になる。つまり、創造力というエンジンを備えた人間こそが、コンピュータに取って換えられることなく、役立つ人間になれるのだ。大雑把に言えば、そんなことが書かれていた。

私が個人的に面白いと思ったポイントは、比喩や類推にある。外山滋比古のモノの結びつけ方は実に明快で、楽しい。こんな上手い比喩が言えたらな、と思わずにはいられない。

というわけで、書評はこのあたりで終えておこう。月2回ペースの更新を続けられたらと思う。


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『決めない』という賢さ

好きな小説家は?と問われれば迷わず「森博嗣」と答える。

 今回紹介するのは、そんな大好きな小説家が書いた新書「人間はいろいろな問題についてどう考えていけばよいのか」である。

 まず、書評を始める前に書いておきたいことがある。

 当ブログは書評を目的のひとつとして立ち上げたのだが、今まで書評をやったこともなかった人間が、初っ端から一冊まるまる書評をするのは無謀以外のなにものでもない。そのため、まずは「心に響いた一文」といったものを紹介していこうと思う。これぞという一文を選び、それについて思ったことを語ろうと思う。

 今回、心に響いた言葉は、本書の第5章「考える『庭』を作る」の節のタイトルとなっている

「『決めない』という賢さ」

である。

 本書の結論を一言で表す非常にインパクトの強い言葉だ。

 「決めない」ことがなぜ賢いのだろう、と最初に私は思った。というのも、パッパッと何でも即決できる人に「スマートな人」「仕事のできる人」といったイメージを私は持っていた。逆に、優柔不断という言葉に対しネガティブな印象があった。

 多くの場合、「決断」のあとには「実行」が存在する。つまり、決断をすることは先へ進むことを意味する。私が即決に対しポジティブな印象を持っていたのはこの点で、「決断=前進」と言う意識のもと、手際のよい決断は凄まじい前進のように感じられたのだ。

 しかし、本書ではさらに、「決断」に対するもうひとつの捉え方を提示している。
 0か一かを決めないといけない、と考えるのは、「もう考えたくない」という生理的な欲求によるものだと考えられる。(p.195)” 
 つまり、決断とは同時に思考を終える事であり、強引に解釈すると「決断=逃避」とも言えるのだ。

 例えば、受験生の頃、マーク式の問題で「早く次の問題に移りたい」という焦りから、確信を持てていないにも関わらず適当な数字を塗りつぶすことがあった。この行為は決断であり、そして、明らかに逃避である。

 また、本書では
 ”選択肢が簡単に見つからないような、少し難しい問題に直面すると、どうすれば良いかを、「人にきく」人、「調べる」人が多くなる。でも、なかなか自分では考えない。(p.186)”

 といったように、当てずっぽうでなく、正しい答えを選択した場合でも、その導き方次第では思考停止と同等だとしている。

 では、どうしたらよいのか。

 本書では
 い判断の方が正しさに近い(p.196)”

 としている。つまり、できる限り決断は保留していた方がよいのだ。何故なら、問題に対してより多くの考察が行えるからである。さらには、別の保留中の問題と混ぜ合わせることで、新たな解決法を閃くこともあり得る。
 
 悩み続けられる限り、悩み続ける。これが良い判断を生むひとつの方法である。

 しかし、実際問題、抱えている問題をいつまでも保留にはできない。「保留」は時間が経てば「先延ばし」に変わってしまう。 

 そこで重要になってくるのが「できる限り」という部分であるように思う。

 とすると、また問題が浮上してくる。「できる限り」とはどんな限りか、ということである。どの時点で決断をすればよいのか。

 話が徐々に複雑になってきた。答えもスッと湧いてきそうにない。

 恐らく、こういう時に大切なのが「決めない」という考えなのだろう。

 というわけで、知りすぼみで中途半端な感じではあるが、ここまでで「保留」とさせて頂こう。
 
 「即決=スマート」が必ずしも成り立たず、「決めない」つまり「悩み抜く」という賢さのあるということを教えてくれた本書。

 何事もスピードが重視されがちな社会、素早い決断を迫られることが多いが、是非、この本を読んで、「人間はいろいろな問題についてどう考えていけばよいのか」改めて考え直してみてはいかがだろうか。